米裁判所、「トルネードキャッシュ」に対する米国の制裁を覆す
米裁判所が「トルネードキャッシュ」に対する米国の制裁を覆す
米財務省は2022年に暗号資産(仮想通貨)のミキシングプラットフォームの「トルネードキャッシュ(Tornado Cash)」に制裁を課し、北朝鮮のハッカーやその他の悪意あるサイバー犯罪者による70億ドル以上の資金洗浄を支援したと非難したが、これは財務省の権限を越えた行動だったと米控訴裁判所は判決を下した。
ニューオーリンズに拠点を置く第5巡回控訴裁判所の3名の判事からなる審理部は11月26日、暗号資産取引所コインベース(Coinbase)の資金援助を受け、制裁に異議を唱える訴訟を起こした「トルネードキャッシュ」のユーザー6名の側に立った。
暗号資産ミキサーは、ユーザーがデジタル資産の出所や所有者を隠せる、匿名化されたソフトウェアツールである。「トルネードキャッシュ」への制裁は、財務省の外国資産管理局(OFAC)が「国際緊急経済権限法」に基づいて課したものであった。
OFACは、「トルネードキャッシュ」がサイバー犯罪の利益を洗浄する手助けをしていると結論付け、特に北朝鮮政府に支援されているハッカー集団「ラザルスグループ」が盗んだ4億5500万ドル以上を含む資金の洗浄に関与していたとして、「トルネードキャッシュ」をブラックリストに載せた。
保守派の判事で構成される委員会の意見書で、米国巡回裁判所のドン・ウィレット(Don Willett)判事は、「トルネードキャッシュの不変の暗号資産ミキシングスマートコントラクトは、財務省の規制対象となる『財産』には該当しない」として、OFACの権限を制限するとの判決を下した。
このような自動実行型のスマートコントラクト、つまり「ミキサー」は、多くのユーザーによって預けられた暗号資産を集め、プール、シャッフルすることによって匿名性を高めるものであり、変更や削除、管理が不可能であると説明した。
共和党の次期大統領ドナルド・トランプ(Donald Trump)氏により、同氏の最初の4年間の任期中に任命された同判事は、プライバシー保護を可能にするソフトウェアコードの設計により、それを所有することや、法的な財産として認識ができなくなったと述べた。
またウィレット判事は、「制御不可能な技術がOFACの制裁権限外にある現実の問題」を認めつつも、この問題は裁判所ではなく、インターネット時代に適応するために議会が1977年の法律を更新するべきだと強調した。
財務省はコメントの要請に応じなかった。
コインベースの最高法務責任者ポール・グレワル(Paul Grewal)氏はXへの投稿で、この判決を「暗号資産と自由を守ることに関心を持つすべての人にとっての歴史的な勝利」と称賛した。コインベースは、OFACが技術全体を制裁するという決定は、イノベーションを阻害し、プライバシーを損なう可能性があると主張していた。
今年5月、トルネードキャッシュの開発者アレクセイ・ペルトセフ(Alexey Pertsev)氏は、オランダで資金洗浄の罪で5年4ヶ月の懲役刑を言い渡された。トルネードキャッシュの創設者ロマン・セメノフ(Roman Semenov)氏とロマン・ストーム(Roman Storm)氏は昨年、ニューヨークの連邦検察官から資金洗浄および制裁違反で別々に起訴された。
※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Court overturns US sanctions against cryptocurrency mixer Tornado Cash
(Reporting by Nate Raymond in Boston; editing by Jonathan Oatis)
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
画像:iStock/Lidiia-Moor・metamorworks
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この記事の著者・インタビューイ
大津賀新也
「あたらしい経済」編集部
記者・編集者
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。
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記者・編集者
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。
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